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結論:介護・福祉の求人票で「月給例」を高く見せると、応募は増えても、面接や内定の場でギャップが出て失敗しやすくなります。見栄えよりも「実際に提示できる額」を、条件つきで正直に書くほうが、結果的に採用の質が上がります。
筆者は、社会福祉法人の人事責任者として採用に関わるなかで、求人票の月給例を高めに載せてしまった失敗を経験しました。この記事では、その経験と、求人票の賃金表示で守るべきルール、そして失敗しない書き方のチェックポイントを整理します。
この記事を書いた人
社会福祉法人の人事責任者として、約700名規模の法人で採用・労務・組織開発・業務効率化を担当しています。これまで数多くの面接を担当してきました。
筆者の失敗談|月給例を高くしすぎて起きたこと
求人票を作るとき、応募を増やしたい気持ちから、月給の例を高めに載せてしまったことがありました。見栄えはよく、応募のきっかけにはなります。
ところが、面接で応募者の経験や資格に合わせて「参考給与」を提示する段階になると、求人票に載せた金額までは提示できない場面が続きました。応募者から見れば、求人票と実際の提示額に差があることになります。求人票は見栄えがよくても、ギャップが出てしまったことで、「失敗だった」と感じました。
この経験から、求人票の月給例は「いちばん高く出せる場合」ではなく、「多くの応募者に実際に提示できる額」を基準にすべきだと考えるようになりました。(個別の法人や求人に関する詳細は、特定されないよう省いています。)
なぜ月給例を盛ると失敗するのか
- 期待値のギャップが信頼を下げる:面接や内定の場で提示額が想定より低いと、応募者は「話が違う」と感じやすくなります。
- 内定辞退や早期の離職につながるおそれ:入職前後にギャップに気づくと、辞退や早期離職の原因になり得ます。
- 面接官の負担が増える:金額の説明に時間がかかり、本来確認したい経験や人柄の話が十分にできなくなります。
- 法律上の問題になる可能性:求人票の賃金は、事実と異なる表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないとされています(後述)。
求人票の賃金表示で押さえたいルール
求人の表示には、職業安定法による決まりがあります。厚生労働省の案内によると、2022年10月の法改正で、求人企業や職業紹介事業者、求人メディアなどが、求人等に関する情報を的確に表示することが義務づけられました。ポイントは次のとおりです。
- 虚偽の表示・誤解を生じさせる表示の禁止:実際の条件と異なる内容や、実際より良く見せるような書き方はできません。
- 固定残業代の表示:固定残業代を含める場合は、その基礎となる時間数や金額などを明示せずに、基本給に含めて表示することは認められません。
- モデル収入例の書き方:収入の例を載せる場合は、全員が必ずその額を受け取れると誤解されるような書き方をしてはいけません。
- 2024年4月からの明示事項の追加:求人票に、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準なども明示することが求められています。
詳しい内容や最新の取り扱いは、厚生労働省の公式資料で確認してください。参考として、厚生労働省の求人等に関する情報の的確な表示に関する案内と、改正職業安定法Q&Aがあります。
介護・福祉の求人票で月給例を書くときの5つのコツ
- 「いちばん高い例」ではなく「多くの人に提示できる例」を載せる:実際の提示額の分布を確認してから決めます。
- 条件をセットで書く:経験年数、保有資格、夜勤の回数、各種手当を含むかどうかを併記すると、誤解を防げます。
- 幅(下限〜上限)で示す:1つの金額だけを載せるより、幅で示すと実態に近づきます。
- 基本給と手当を分けて書く:処遇に関する手当や夜勤手当などが、どこまで含まれているかを明確にします。
- 固定残業代の有無を明示する:含める場合は、時間数と金額を書きます。
求人票の賃金まわりチェック表
| 確認項目 | OKの例 | 見直したい例 |
|---|---|---|
| 月給の書き方 | 「月給22万〜26万円(経験・資格により決定)」 | 「月給30万円も可能」と上限だけを大きく書く |
| モデル例 | 「経験3年・介護福祉士・夜勤4回の場合、月給〇〇円」と条件つき | 条件を書かずに、一番高い例だけを載せる |
| 手当 | 夜勤手当・各種手当の金額と条件を書く | 手当込みの金額を、基本給のように見せる |
| 固定残業代 | 「固定残業代〇時間分・〇円を含む」 | 記載せずに、基本給に含める |
| 昇給・賞与 | 実績に基づく書き方 | 実績のない金額を目安として書く |
この表の金額は例示で、実際の条件は法人ごとに異なります。
面接で給与を説明するときの実務
- 面接の前に、応募者の経験・資格を自法人の賃金表に当てはめて試算しておく:面接の場で慌てずに、根拠のある金額を伝えられます。
- 求人票との差があれば、先に自分から説明する:差がある場合は、理由を丁寧に伝えます。
- 内定の前後で、書面(労働条件通知書)で条件を提示する:口頭だけでなく、書面で確認できる形にします。
応募者の立場で内定後に確認すべき内容は、内定後に必ず確認すべき労働条件にまとめています。
求人票づくりと媒体選びを見直すなら
求人票の書き方を整えたあとは、掲載先の求人媒体の選び方も重要です。媒体ごとの特徴は介護職採用におすすめの求人媒体・採用手法10選で整理しています。求人票の作成にAIを使う方法はChatGPT人事プロンプト15選が参考になります。応募者の情報管理が追いつかなくなってきたら、採用管理システム(ATS)の比較もあわせてご覧ください。
求人の掲載先を比較するときの選択肢の一つとして、求人広告サービスの情報を紹介します。掲載料金や条件は変わるため、必ず公式サイトで最新の内容を確認してください。
よくある質問
Q1. 給与を低めに書くと、応募が減りませんか?
応募数は一時的に減るかもしれません。ただし、実際の条件に納得した人が応募するため、面接や内定後のミスマッチが減り、採用の質が上がることが期待できます。応募を増やしたいときは、金額を盛るのではなく、研修制度や働きやすさなど、実際の魅力を具体的に書く方法があります。
Q2. 経験者と未経験者で金額が大きく違うときは、どう書けばよいですか?
経験・資格ごとに分けて、例を2〜3パターン載せるのがおすすめです。条件と金額の対応が分かると、応募者が自分の場合を想像しやすくなります。
Q3. 法律に違反していないか、どこで確認できますか?
厚生労働省の資料や、都道府県労働局・ハローワークの窓口で確認できます。求人媒体に掲載する場合は、媒体側の審査基準もあります。
まとめ
- 月給例を高く見せると、面接や内定の場でギャップが生じ、信頼を損ないやすい
- 求人票の賃金は、虚偽・誤解を生じさせる表示をしてはならず、固定残業代やモデル収入例の書き方にも決まりがある
- 「実際に提示できる額」を、条件つき・幅つきで書き、面接前に試算しておく
- 差がある場合は先に説明し、条件は書面で提示する
求人票は、応募者との最初の約束です。見栄えより正直さを優先することが、長く働いてくれる人との出会いにつながります。


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