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結論から言うと、介護記録をAIで楽にするコツは「利用者の個人情報を入れない」「職場のルールの範囲で使う」「最後は必ず自分の目で確かめる」の3つを守ることです。
そのうえで、スマホやパソコンの音声入力、文章の言い回しを整える使い方、記録の「型」づくりから始めると、今日からでも負担を減らせます。
職場にAIや記録ソフトがまったく入っていない場合は、無理に個人で持ち込まず、上司への相談や、ICT化が進んだ職場を選ぶという方法もあります。
この記事を書いた人
社会福祉法人の人事責任者として、約700名規模の法人で採用・労務・組織開発・業務効率化を担当しています。これまで数多くの面接を担当してきました。
介護記録が負担になりやすい理由
介護記録は、利用者の状態を職員どうしで共有し、ケアの質を保つための大切な仕事です。ただ、次のような理由で「記録に追われる」と感じる職員は少なくありません。
- ケアの合間に書くため、まとまった時間が取りにくい
- 紙に書いてからパソコンに入力し直すなど、同じ内容を何度も書く
- 「何をどこまで書けばよいか」が人によってばらばらで、毎回悩む
- 文章を書くのが苦手で、1件に時間がかかる
このうち、AIやデジタル機器で軽くしやすいのは「書く作業そのもの」と「文章を整える作業」です。一方で、何を観察し、どう判断したかは職員にしか書けません。ここを分けて考えると、AIの使いどころが見えてきます。
使う前に必ず守る3つのルール
1. 利用者の個人情報をAIに入力しない
ChatGPTなどの一般向け生成AIは、入力した文章が外部のサーバーに送られます。利用者の氏名、生年月日、住所、病名、家族の情報など、個人が特定できる内容は入力しないでください。介護の記録には健康状態など特に配慮が必要な情報が多く含まれるため、「少しくらいなら」は禁物です。
なお、ChatGPTには入力内容をモデルの学習に使わせない設定(データコントロールの「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ)があります。ただし、これは学習に使われないようにする設定で、外部に送られなくなるわけではありません。設定をオフにしても、個人情報を入れてよいことにはならない点に注意してください(設定方法はOpenAIのヘルプページで最新の情報を確認できます)。
2. 職場のルールを先に確認する
法人によっては、生成AIの業務利用を禁止していたり、使ってよいツールを指定していたりします。私物のスマホで業務の記録を扱うこと自体を禁止している職場もあります。まずは上司や管理者に「記録の文章づくりにAIを使ってよいか」「使ってよいツールはあるか」を確認しましょう。
確認せずに使って問題になると、記録の手間が減るどころか、職場の信頼を失いかねません。相談の仕方に迷う場合は、介護職の上司・同僚とのコミュニケーションの取り方|報告・相談・申し送りのコツも参考にしてください。
3. AIの文章は必ず自分で確認してから残す
生成AIは、もっともらしい文章を作るのが得意な反面、事実と違うことや、実際には観察していないことを書き足してしまうことがあります。記録は事実を残すものです。AIが整えた文章は、「自分が見たこと・したことと一致しているか」を必ず読み直してから記録に使ってください。
今日からできる介護記録の効率化4つ
1. 音声入力で「書く」を「話す」に変える
スマホやパソコンには、話した言葉を文字にする音声入力の機能が標準で入っています。記録ソフトにも音声入力に対応したものがあります。職場で認められた端末・ソフトであれば、キーボードで打つより早く下書きができ、文章を打つのが苦手な人ほど効果を感じやすい方法です。
ただし、利用者の居室や共有スペースで話すと、ほかの利用者に内容が聞こえてしまうことがあります。話す場所には気をつけましょう。
2. 記録の「型」をAIと一緒に作る
毎回悩む原因の多くは、「何を書けばよいか」が決まっていないことです。個人情報を含まない形で、AIに型づくりを手伝ってもらうのがおすすめです。たとえば、次のように聞きます。
介護施設の日中の記録で、食事・排せつ・水分・様子の変化を簡潔に書くための記入テンプレートを作ってください。事実と、職員の判断・対応を分けて書ける形にしてください。
できた型は、職場の記録のルールに合わせて直し、上司やリーダーの確認をとってから使いましょう。チームで同じ型を使えば、読み手にとっても分かりやすい記録になります。
3. 言い回しや敬語の直し方をAIに聞く
「この書き方は主観的すぎないか」「家族向けの連絡文として失礼がないか」といった言い回しの相談は、AIが得意な分野です。実際の記録をそのまま貼るのではなく、名前や固有の情報を外し、一般的な例文にしてから聞きましょう。
- 例:「『いつもより元気がない』を客観的な表現にするとどう書けますか」
- 例:「『拒否された』を記録でより適切に書く言い方の例を教えてください」
何度か聞くうちに自分の中に言い回しのストックがたまり、AIを使わなくても早く書けるようになります。
4. 職場の記録ソフトの機能を使い切る
記録ソフトやタブレットが入っている職場なら、定型文の登録、選択式の入力、音声入力など、使っていない便利機能が残っていることがよくあります。まずは今ある道具を使い切るのが、最も安全で確実な効率化です。分からない機能は、詳しい職員や管理者に聞いてみましょう。
国も、介護現場の生産性向上のために、介護ロボットや記録ソフトなどのICT機器の導入を補助する事業(介護テクノロジーの導入支援)を都道府県を通じて行っています。補助の対象や内容は都道府県ごとに異なるため、詳しくは厚生労働省やお住まいの都道府県の公式サイトでご確認ください。職場に導入を提案するときの材料にもなります。
採用側から見た「記録のICT化」と職場選び
記録の方法は、毎日の残業や働きやすさに直結します。採用する側から見ても、応募者が記録の方法を質問するのは「入職後の働き方を具体的に考えている」というサインで、失礼な質問ではありません。職場選びで確かめておく価値がある項目です。
面接や職場見学では、次のように聞くと、記録の負担がどのくらいか具体的に分かります。
- 「記録は紙ですか、タブレットや記録ソフトですか」
- 「記録はケアの合間に書きますか、まとめて書く時間がありますか」
- 「記録のために残業になることはありますか」
残業の実態の聞き方は介護職の面接で有給休暇・残業の実態を確認する方法、職場の雰囲気の確かめ方は介護・福祉の法人の理念と職場の雰囲気の見極め方で詳しく解説しています。
注意点・デメリット
- AIは観察や判断の代わりにならない:記録の中身で大切なのは、職員が見たこと・感じた変化・とった対応です。AIに任せきりにすると、記録が形だけになってしまいます。
- 個人情報の扱いを誤ると重大な問題になる:一度外部に送った情報は取り消せません。迷ったら入力しないのが原則です。
- 職場によっては使えない:ルールで禁止されている職場では、個人の判断で使わないでください。
- 慣れるまでは逆に時間がかかる:型づくりや音声入力は、最初の数回は手間に感じることがあります。効果を判断するのは、しばらく続けてからにしましょう。
- 導入には費用と準備が必要:記録ソフトやタブレットの導入は法人の判断と予算が必要で、現場職員の希望だけですぐに進むものではありません。
まとめ
介護記録をAIで楽にするには、「個人情報を入れない」「職場のルールを守る」「最後は自分で確認する」の3つが前提です。そのうえで、音声入力、記録の型づくり、言い回しの相談、今ある記録ソフトの機能の活用から始めると、無理なく負担を減らせます。
それでも記録に追われて毎日残業が続いている場合は、働き方そのものを見直すタイミングかもしれません。疲れがたまっているサインがあるときは、介護職のバーンアウト(燃え尽き症候群)のサインと予防法もあわせて読んでみてください。
記録の負担が少ない職場を探したい方へ
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